テレワークが離職を生む時代が来るかもしれない

テレワークが離職を生む時代が来るかもしれない

「自分、このままどうなっちゃうんだろう…」
自嘲気味にほほえみながら、物憂げに一言呟いた彼女の目は笑っていなかった。

テレワークが始まって、自宅で仕事をすることが増えましたね。
あなたの会社ではどんな働き方になっていますか?
IT関連の企業は、本当に多くの会社がテレワークを導入していると伺っています。
ただ、銀行関連の案件を扱っていたり、重要な個人情報を扱っている方などは、残念ながらテレワークができなかったなんて声もありますよね。

今回ご紹介するのは、いきなりテレワークがメインになってしまい、不安が募ってしまったというお話。
あなたは、一人で黙々と自宅でお仕事だけやっていられますか?

「テレワーク中は自己管理が…意外と大変なんです。WEB会議で顔出ししてる人がいる中で、まだ一度も顔出しできてないです」
「顔出し必須といわれることはないですが、出している人と私に温度差があるように思われるのはちょっと嫌だなとも思います…」
面談の場でも顔出しをしていないことを謝罪した上で、彼女はそう答えた。

「したい、とは思われているんですか?」
「うーん。できるだけしたくはないです…。うちのPCだとバーチャル背景使えないから自宅の様子が見えてしまうのも気になって…しまって…。かといって、顔をこのまま出さないと、なんか顔出ししてる人達ばかりが仲良くなってる気もして不安のようなものもあります」

平静を保ってお話を続けてはいるけれど、どこか落ち着かない様子を感じる声。
焦ってるわけじゃない。けれど、どうしていいかわからない。
いや、どうしたらいいのかはわかっている。
わかっているけど、踏み出せないようなそんな思いを感じた。

「不安、というと?」
「一番は、自分だけおいていかれるんじゃないかって感じですね。うちはZOOM飲み会とかもやってないはずですけど、実は裏でやってるんじゃないかとか思うこともあって。仕事自体は、家でもできるんですけど、気軽に聞いたり、おしゃべりしたりすることがなくなって、このままずっと続けていけるのかな?とか、どうなるんだろうみたいな…」
「顔出しは自由だから、みんな気を使ってくれるんです。うちの職場女性が少ないんで、メイクとか大変だと思うしいいよって言ってくれる。甘えてるつもりはないんですけど、昭和生まれの上司からしたら甘えてると思われてるのかな…わからないですけど」
他にも、思うことたくさんあって、最近は積もる一方だという。
普段なら、毎日顔を見ているから些細な話でも共有できるし、信じられる。
けど、一人になった途端自分の思い込みが全く解消できないような状態に陥っているらしい。
「気軽に声をかけてとは言ってくれるんですけどね…気軽には声掛けられないですよね…。わざわざ呼び出すような感じになってしまうのが、相手に悪いって思っちゃうんです…。最近仕事に詰まると、今みたいに考えこんじゃうことが多くて、質も下がってきているようにも思うんです…。日報も注意されちゃったから迷惑だけは、掛けないようにしないと」

テレワークが一斉に普及したけれど、統計によると7割の人がパフォーマンスの低下を感じるらしい。
幸い彼女はそうではないが、テレワークが苦痛で転職したいという話も伺っている。
通勤時間が無くなり、自由に仕事に取り組めるようになったはずなのに、だ。

私は、テレワーク自体の不安とは、周りの人との繋がりが感じられない不安ではないかと思う。
言い換えれば、「私はここで働いていていいんだ」という自分の居場所について不安があるのではないだろうか。
人がいればこそできることがある。
あなたも考えてみて欲しい。
仕事自体は一人でやっていても、日々どこかでコミュニケーションを取っていませんか?
・朝の挨拶をする
・トイレ行くときには声をかける
・ご飯を共にする
などなど、職場によって色々なコミュニケーションの形があるように思います。
人間関係は常にアナログ的で連続したものであるのに、テレワークという制度の下でデジタル的にON/OFFで処理されてしまう。
管理職の方はどうやってラインケアをしていくのでしょうか。
メンバーの方はどうやって思いを伝えればいいのでしょうか。
文字には文字の、ビデオチャットではビデオチャットの、対面は対面のそれぞれの良さがあります。
テレワーク時代においては、制度に固執してはいけないのではないかと思う。
常に相手目線で考えることを求められている制度な気さえする。
テレワークという働き方が新しい付加価値を生む為には、働く人一人ひとりが「私はここで一緒に仕事していいんだ」という安心を積極的に作っていくことがこれから求められていくのではないだろうか。

投稿者プロフィール

木村 俊夫
木村 俊夫
自信が無くて引きこもっていた自分が前に進めたきっかけは「聴いてくれる人」でした。大学卒業後から起業し「聴く」ことをベースに活動をしています。教育、面接、マネジメント、カウンセリング、講師と様々な複業の実践家でもある。
現在は「カウンセリング」の良さを広げる伝道師として活動を続けている。