メンバーの主体性を引き出す?引き出せない?

メンバーの主体性を引き出す?引き出せない?

「指示以外全然やってくれないんです・・・」
「自分、やりたいことってないんです・・・」
メンバーの主体性を引き出したいと考える人と、やりたいことが無いのに主体的になれるわけがないという二つの相反する主張。
今回は「主体性」について考えてみましょう。

主体性とは?

主体性というのは、自分の選択や行動に責任を持った態度のことです。
やる必要があるからやるとか、今できる最高を尽くそうとか、そういった意味合いではありません。
「やりたいことがない」ということで、前向きに仕事をやらず、今のままの生活甘んじている人であったとしても、主体性がある場合もあります。
「私はこの選択でいい。解雇されても後悔しないし、生活の為だけに収入があればいい」なんて、心の底から思って、行動しているのであれば、主体的な人と言えるのではないでしょうか。
人がどう判断するかや、効率や、効果等を考えておらず、「私の責任」でやる/やらないを決めているのであれば、主体性を持っているといえるのではないでしょうか。

自主性との違い

似た言葉に自主性というのがあります。
自主性には、「自分で判断して行動する」という意味合いしかありません。
指示された仕事だけを行っている場合であっても、判断を要することがあったり、優先順位を付ける必要がある場合などは、言われたことしかしない人にも、自主性が見られます。
そう考えると、近い将来、AIにも自主性は備わってくるような気がしています。

主体性は引き出すべき?

引き出す必要、あるのでしょうか?
引き出したらどんないいことがあるんでしょうか?
「主体性があると人生が楽しいよ!」
「やりたいことがやれるようになるよ!」
「仕事も楽しくなるよ!」
こういったフレーズには事欠きませんが、本当にそうなのでしょうか?
無きゃ無いで楽しいのが人生だと思う。

ただ、会社の評価や周りからの評価には関わる要素の一つだということは、自覚しておくべきです。
会社は利益を追求する組織であって、あなたの意思を完全に尊重し、生活を守る機関ではありません。
また、上司が評価しているのは、仕事に積極的に取り組んでいることや、何かチャレンジし続けるような行動です。
このような行動を評価する際のラベルが、「主体性」という言葉になっているにすぎません。
「会社に評価されたい」とか、「もうちょっとお金が欲しい」とか思う場合には、行動して見せないといつまで経っても「できるやつ」と思ってもらえないよ。
ということだけは、経験上言えるかと考えています。

あなたは、今の現状を全て自分の責任として受け止めることができていますか?

主体性は引き出せるの?

私は、そもそも主体性は引き出すものなのか?ということを一度考えてもいいように思っています。
なぜなら、「主体性を引き出したい」ということを主張する人は、自分以外の誰かに行動を変えて欲しいとか、私が考えているような仕事をしてほしいと要求しているだけに過ぎないこともあるのではないでしょうか。
「あの後輩は指示したことしかやらない」
「あいつに比べて主体性が無い」
このような例には事欠きません。

本当に、その人の主体性を引き出したいと思っていますか?
自分の思うように業務をやってもらいたいだけだったりはしませんか?
自主性と勘違いしていませんか?

「主体性」は見つけるもの。

「主体性」は、引き出すものじゃなくて、見つけるもの
私はそう考えています。
判断の話や、行動の話ではなく、もっと人間としての本質的なトコロ。
生きている、生かされている自分の責任を自覚するからこそ、行動にもつながるし、チャレンジ精神や、勇気に繋がる。
ただ、それだけなのではないでしょうか。
指導や教育で何とかなるものではなく、他人である我々には、常にお手伝いしかできないのです。
1on1で勇気をもらって、新しいプロジェクトの立ち上げができたという人もいれば、座談会で他社の人と新しく協業の話ができているという人もいる。
動けるようになったって人は何人もいるけれど、主体性を引き出してもらったという人を、私は一人も見たことがありません。
「誰か」との交流の中で、自分で見つけだしていくものが「主体性」なんだろうなと思っています。
私も、キャリアコンサルタントとして様々な面談を行っていますが、私たちは基本的に話を聞いて、一緒に経験を紐解いたり見かたを変えたりと、一人ではできないことを一緒にやっているだけ。
そうして「主体的」に動くのは、結局クライアントさんです。
それでも、お礼を言ってくれることが私は嬉しくてたまりません。

動けない時は、意外と自分の内側に向き合いきれていない時な気がしています。
心配・不安、成功至上主義、正解ありきの教育、怒られたくない、指摘が苦手など、様々な思いがあります。

上司や会社が求めているものは、主体性ではありません。
「主体性を持った自主的な業務遂行」です。
言い換えると、「あなたの判断と責任で、会社のためになる行動をしろ」と言っているようなものだと私は思っています。
こんなにマネジメントを頑張っているのに、メンバーが全然動いてくれないと思っている管理職のあなた。
もしかしたら、一緒に見つけようとしないで、価値観の押し付けをしているだけになっているかもしれません。

投稿者プロフィール

木村 俊夫
木村 俊夫
自信が無くて引きこもっていた自分が前に進めたきっかけは「聴いてくれる人」でした。大学卒業後から起業し「聴く」ことをベースに活動をしています。教育、面接、マネジメント、カウンセリング、講師と様々な複業の実践家でもある。
現在は「カウンセリング」の良さを広げる伝道師として活動を続けている。