メンタルヘルスの4つのケアとは?(ラインケア)

メンタルヘルスの4つのケアとは?(ラインケア)

キャリアカウンセラーの岸まゆみです。

前回から、厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の中で示されているメンタルヘルスの4つのケアをご紹介しています。

本日の記事で紹介するのは「ラインケア」です。

ラインケアとは

ラインケアは、管理監督者が行うケアのことです。日頃の職場環境の把握と改善、メンバーからの相談対応、お休みしていたスタッフに対する職場復帰の支援などが含まれます。

ケアの効果を発揮させるためには、管理監督者の方の「部下への接し方」が重要になってきます。詳しくは「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に詳しく書かれていますが、その中からポイントとなる部分を抜粋してお伝えします。

部下に興味・関心を持つ

ラインケアでは、上司が「いつもと違う」部下にいかに気づけるかが重要です。そして、「いつもと違う」ということに気づくためには、日々、部下のことを見ていないと難しいです。上司が自分の仕事に手一杯で、部下を全く見ていない場合、部下が明らかに普段と異なる行動を取っていたとしてもスルーしてしまう可能性があります。

日頃から「今、部下はどんな仕事に手を付けているのかな」「今、どんな気持ちでどんな行動をしているのかな」と部下に興味を持って観察しておかないと、変化に気づけないかも知れません。メンタルヘルスケアの基本中の基本は、「部下に興味・関心を持つ」ということではないでしょうか。(1つ1つの行動をじ~と見つめ続けていると不快感を与えてしまうので注意が必要ですけどね)

「部下に興味を持っていない人なんているの?」と驚かれるかも知れませんが、意外と、部下の人柄や行動パターンを気にしていない方はいます。あなたは、部下や一緒に仕事をしているメンバーのことをどれくらい知っていますか?
「そういえば部下のこと、全然知らないかも」と思った方は、今日からもう少し、日々頑張っている部下に対して関心を向けてみてはいかがでしょうか。

「いつもと違う」部下の様子

○ 遅刻、早退、欠勤が増える 
○ 休みの連絡がない(無断欠勤がある) 
○ 残業、休日出勤が不釣合いに増える 
○ 仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する 
○ 業務の結果がなかなかでてこない 
○ 報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆) 
○ 表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆) 
○ 不自然な言動が目立つ 
○ ミスや事故が目立つ 
○ 服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

「労働者の心の健康の保持増進のための指針」厚生労働省

相談しやすい環境や雰囲気を作る

ラインケアの中に「部下からの相談への対応」という内容が含まれますが、部下が相談してきたら話を聴けばよいという訳ではありません。上司は、部下から相談しやすいように心がけることが大切です。

相談しやすい雰囲気づくりのためには、上司から積極的に部下に「最近どう?」といった声かけをすることが効果的です。さらに、厚生労働省の資料には、下記のような対応も必要であると書かれています。

○ 話を聴く(積極的傾聴)
○ 適切な情報を提供する
○ 必要に応じて事業場内産業保健スタッフ等や事業場外資源への相談や受診を促すなど

「労働者の心の健康の保持増進のための指針」厚生労働省

話を聴く(積極的傾聴)というのは、私たちカウンセラーの大前提でもあります。もし、部下が上司に相談しても、上司が部下の言葉に耳を傾けてくれなかったとしたら…部下はどう思うでしょうか?

「勇気を出して相談しても聴いてくれない」
「相談しても無駄。意味がない」
「次から悩みがあっても相談しないでおこう」
きっと、こんな風に思うのではないでしょうか。

上司は、例え部下の考えが自分の考えとズレていたり、自分の価値観にまったく合わないことを主張されたとしても、「部下が今、どんな気持ちなのか」「要望は何なのか」をしっかりと聴いてあげて欲しいと思います。

部下の気持ちを受け止め、理解する

ラインケアには「メンタルヘルス不調の部下の職場復帰への支援」も含まれます。
私はカウンセリング現場で、メンタル不調による休職後に復職した方のお話を聴くこともあります。リアルな声を聴いていると、いろいろと感じることがあります。

中でも、「復職後、以前と同じような動きを期待されていて困る」という相談を何度も聴きました。適応障害など、何らかの不調で数カ月休職していた方が、復職後にいきなり以前と同じ質・量の仕事を期待するのは無理があります。ただ、上司としては「もう元気になったのだから、以前と同じ仕事は頑張って!」という気持ちが出てくるのだと思います。

しかし、復職後のスタッフへの「期待」はプレッシャーとなり、ストレスとなり、また休職せざるを得ないメンタル不調につながってしまうおそれもあります。

上司にはそのつもりがなくても、以前と同じ仕事をこなすことを求めるのは、部下にとっては「過度な期待」となってしまいます。

復職された方は、「自分の体調」「上司からの評価」「今後のキャリア」など、いろいろと悩んでおられます。そして、上司の些細な一言で傷ついてしまうということもあります。

そこで大切なのは、「部下の気持ちを受け止め、分かってあげること」
復職したばかりの方は「不安」や「心配事」が多いので、「〇〇が不安なんです」ということを部下に話してもらい、上司が「〇〇が不安なんだね」と受け止めるだけでも十分です。

焦らず、部下のペースに合わせて復職を支援できると良いですね。
もちろん、復職した方に限らず、部下の気持ちを受け止めて理解することは良好な人間関係につながります。ぜひ、上司のみなさんには意識していただければと思います。

まとめ

本日は管理監督者が行う「ラインケア」についてお伝えしました。
「なんだ、そんなことか」「当たり前のことではないか」と思われた方もいるかもしれませんね。
ただ、「上記のことを全て実践できていて、部下のメンタルヘルスケアがしっかりできている」と自信を持って言える管理監督者の方は、どれくらいいらっしゃるのでしょうか?

ぜひ、「知っている」だけではなく「やっている」「できている」という状態に持っていってほしいと思います。

もしあなたに部下がいるのであれば、部下からのSOSに気づけるよう、日頃からちょっとしたことでもこまめにコミュニケーションを取っておくことをオススメします。

職場全体で、メンタルを健康な状態にしていきたいですね!


(参考記事)
精神力が強くてもメンタル不調になる可能性はある

メンタルヘルスの4つのケアとは?(セルフケア)

投稿者プロフィール

岸まゆみ
岸まゆみキャリアカウンセラー
2010年より介護サービス企業の法務に10年間携わり、マネジメントも経験。自分がカウンセリングを受けて気持ちが楽になったことからカウンセラーになることを決意。2020年より生活保護受給者の就労支援カウンセラーとして従事した後、2021年10月にキャリアブリッジへ入社。2021年よりフリーのキャリアカウンセラーとしても活動中。