正解探しではなく「自分がどうしたいのか」を探す

正解探しではなく「自分がどうしたいのか」を探す

キャリアカウンセラーの岸まゆみです。

様々な方に対してカウンセリングを行っている中で、相談者様から「こんな状況で悩んでいます。どうしたら良いですか?」と聞かれることがあります。
このように聞かれた場合、私は、「〇〇さんは、どうしたいですか?」と聞きます。
そうすると、ご自身がどうしたいのかを答えてくれる方もいますが、「どうすれば良いか分からない」という返答をされる方もいます。

「悩みを解決したい」という思いがある相談者様は、「どのような行動をすれば良いのか」という正解を探しています。
この時、「自分がどうしたいのか」ではなく、「人から評価されるにはどのようにすれば良いか」「人に嫌われないようにするにはどうすれば良いか」という視点で考えている方が多いです。

しかし、大切なのは、一人ひとりの「どうしたいか」という「望み」です。
私は、カウンセリング中に相談者様から「どうすれば良いですか?」と聞かれた際、「これをやると良いですよ」とアドバイスすることはありません。

私がやることは、「どうしたいのか」というご本人が理想とする姿、つまり「望み」を明確にするお手伝いです。
悩みは、何らかの理由で「自分の理想通りになっていない」ということから発生します。
「どうしてそのことで悩んでいるのか?」という理由がはっきりすれば、「本当はどうしたいのか?」を明確にするヒントとなります。

そこで、私は「何がきっかけで悩むようになりましたか?」「どうしてそう感じるのでしょうか?」といった質問を相手に投げかけていきます。
私の質問に答える中で、相談者様が自ら、「こうしたい!」という望みを見つけることができるのです。

私は、幼い頃から常に親の顔色を伺い、「怒られないようにしよう」と気を付けて行動していました。(実際は怒られることも多かったのですが…)
特に、母親には「認められたい」「ほめられたい」という思いが強く、「どうやったらお母さんにほめられるだろうか?」と考えていた記憶があります。
母親の顔色を伺うクセがつくと、無意識に母親以外の人の顔色も伺うようになっていました。母親だけでなく、誰からも「認められたい」「ほめられたい」という思いが生じてきました。

大人になって会社に入ると、上司の顔色をものすごく伺うようになりました。
「上司に評価されるように行動しよう」「怒られないようにしよう」と考え、上司に気に入られるような行動や発言をするようになりました。
さらには上司以外の先輩や同僚に対しても気を遣い、「自分がどうしたいのか」なんて全く考えず、「自分の意見なんて持ってはいけない」とさえ思っていました。

今になって思うと、人の顔色を伺うような生き方は、私にとって苦しく辛いものでした。
なぜなら、常に人の顔色を見て自分がどうするかを考えていると、怒られることは少ないけれど、けっこう疲れます。常に気を張っていなければいけなかったからです。
前回の記事に登場したカウンセラーさんに「自分がどうしたいのか」が大事だと教えてもらったことをきっかけに、私は、人の顔色を伺ってばかりの生き方はやめようと思いました。

しかし、いざ自分の望み通りに生きようとしても、それまで人の機嫌を取るための行動しかしてこなかったので、自分の望みが全く分かりませんでした。
そこで私は、自分の望みを知るために、日常生活の中で「どうしたいの?」と自分の心に聞く習慣をつけることにしました。
最初は、自分が食べたいものすら分からない状態でしたが、様々な選択をするたびに自分の心に聞くように心がけたところ、少しずつ自分がどうしたいのかが分かってきました。
そして、5年くらい続けていくと、自分がどうしたいのかがはっきりと分かるようになりました。

カウンセリングの際、時間内に相談者様の望みが見つからないこともあります。
なぜなら、私のように、ずっと他人からの評価を気にして生きてきた方が急に「どうしたいの?」と聞かれても、自分自身がどうしたいのか、ご自身でも分からないのです。
しかし、そこで諦めるのではなく、「どうしたいのか」を探し続けることが、ご本人のお悩み解決や自己実現に繋がっていきます。

あなたも、「どうすべきか?」という正解を探すのではなく、「私はどうしたいの?」と、自分の心に聞き始めてみませんか?

投稿者プロフィール

岸まゆみ
岸まゆみキャリアカウンセラー
2010年より介護サービス企業の法務に10年間携わり、マネジメントも経験。自分がカウンセリングを受けて気持ちが楽になったことからカウンセラーになることを決意。2020年より生活保護受給者の就労支援カウンセラーとして従事した後、2021年10月にキャリアブリッジへ入社。2021年よりフリーのキャリアカウンセラーとしても活動中。